ネットで調べると、こんな「メリット」ばかりが目に飛び込んできますよね。
でも、私たちが本当に不安に思っているのは、お金のことだけではありません。

労災申請したら、会社にいづらくなるんじゃないか?

復職した時、裏切り者扱いされるんじゃ…
そんな恐怖から、申請をためらっている方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、その勘は間違っていません。
労災申請は「会社と戦うこと」に近い側面があるため、どうしても職場との関係はギクシャクしがちです。
今日は、弁護士サイトにはなかなか書かれない「労災申請のリアルなリスク(人間関係)」と、それでも申請すべきかどうか迷った時の「判断基準」について、作業療法士でありうつ病当事者の視点で解説します。
この記事は経験者・OTとしての視点で執筆しています。
個別のケースや法的な判断については、必ず労働基準監督署や弁護士にご相談ください。
「会社にいづらくなる」は本当か?労災申請のリアル

「会社にいづらくなる」という不安。
残酷なようですが、これは「ほぼ間違いなく現実になる」と覚悟しておいた方がいいです。
なぜなら、あなたが労災申請をすることで、会社側には「絶対に避けたいリスク」が発生するからです。
会社が労災を嫌がる理由
厚生労働省の資料にもあるように、労災が発生すると事業主には様々な責任が生じます。
事業主の責任・義務
労災事故が発生した場合、当該事業主は、労働基準法により補償責任を負わねばなりません。
(中略)また、場合によっては、労働基準法上の補償責任とは別に、当該労災について不法行為・債務不履行(安全配慮義務違反)などの事由により被災者等から事業主に対し民法上の損害賠償請求がなされることもあります。
現場で起きること
会社側が協力的でない場合、こんなことが起こり得ます。
ただでさえうつ病で心が弱っている時に、この「会社との冷戦状態」に半年〜1年近く耐えなければならないかもしれません。

想像以上に過酷なことですよね…
「労災」と「傷病手当金」どっちが得?(お金 vs 安心)

では、その苦労をしてまで労災を選ぶメリットはあるのでしょうか?
健康保険の「傷病手当金」と比較してみましょう。
ここで重要なのが、「自立支援医療制度」の存在です。
「労災なら治療費タダだからお得!」と思われがちですが、実は傷病手当金でも工夫次第で医療費はかなり安く抑えられます。
【比較表】労災 vs 傷病手当金
「労災の方が補償が手厚い」というのは事実です。
しかし、精神的なコストや使える制度を含めて総合的に比較すると、見え方はガラリと変わります。
まずは、作成したこちらの比較図をご覧ください。


結論としては、戦うなら労災、休むなら傷病手当金です!
意外と埋められる「お金の差」
一番気になるのは「金額」ですよね。
「労災なら治療費がタダ(0円)だけど、傷病手当金だと3割負担でお金がかかる…」と不安になるかもしれません。
でも、ここには抜け道があります。
「自立支援医療(精神通院医療)」という公的な制度を申請すれば、精神科の医療費は1割負担まで下がります(世帯所得によっては月額上限2,500円〜などで済みます)。
つまり、この制度を併用すれば、治療費のメリットはそこまで大差がなくなるのです。
埋められない「時間とメンタルの差」
一方で、どうしても埋められないのが「審査スピード」と「会社との関係」です。
「給付金の差額(約13%)をもらうために、半年間の無収入と、会社との冷戦状態に耐える体力があるか?」
ここが、どちらを選ぶかの最大の分かれ道になります。
意外と知られていない「自立支援医療」の併用
労災を使わないと「治療費が3割負担でキツイ」と思うかもしれませんが、「自立支援医療(精神通院医療)」という制度を申請すれば、精神科の医療費は1割負担になります。
さらに、世帯所得によっては「月額上限(2,500円〜など)」が設定されるため、実質的な医療費の差はそこまで大きくならないケースも多いのです。
「お金のために労災!」と決めつける前に、「差額の13%(給付金)と治療費のために、会社と戦うエネルギーがあるか?」を天秤にかけてみてください。

自立支援医療について知りたい方は、こちらをご覧ください!
それでも「労災」を選ぶべきなのはこんな人

リスクを理解した上でも、労災を申請すべきケースはもちろんあります。
以下の3つに当てはまるなら、戦う価値は十分にあるでしょう。
1. 「もう会社を辞めるつもり(復職しない)」人
「二度とあの会社には戻らない」「退職前提で、きっちり落とし前をつけてやる!」という場合。
会社にいづらくなるリスク(=居場所がなくなるリスク)を考慮する必要がないので、正当な権利として堂々と申請しましょう。
2. 「明らかな証拠」がある人
厚生労働省の認定基準における「心理的負荷が『強』」に当たる証拠が揃っている場合です。
これらが客観的に証明できるなら、認定される確率は上がります。
精神障害の労災認定要件
認定基準の対象となる精神障害を発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
3. どうしても「お金」が必要な人
貯金が全くなく、少しでも多くの補償がないと生活が破綻してしまう場合。
ただし、労災認定が降りるまでは無収入になる期間(半年以上)があるため、その間のつなぎ資金は必要になります。
迷ったら「傷病手当金」で休むのが賢い戦略

もしあなたが、
そう思っているなら、無理に労災を選ばず「傷病手当金」を受給して静かに休むのが賢い選択だと私は思います。
「逃げ」ではなく「戦略的撤退」
うつ病の治療で一番大切なのは、「安心感」です。
会社と揉めながら労基署の調査に協力し、いつ認定されるか分からない結果を待つ日々は、想像以上にメンタルを削ります。
そのストレスでうつ病が悪化してしまっては、元も子もありません。
まずは傷病手当金をもらって、自立支援医療で医療費を抑えてゆっくり休む。
会社との関係を良好に保っておけば、復職のハードルも下がります。
実は「後出し」もできる
ちなみに、労災の請求には時効があります(療養給付は2年など)。
まずは傷病手当金で生活を安定させ、体力が回復してから「やっぱりあれは労災だった」と弁護士に相談して申請することも、制度上は可能です。

その場合は傷病手当金の返還手続きなどが必要になりますが、選択肢として持っておくだけで心に余裕ができます!
▼「傷病手当金」の申請方法や注意点はこちら
会社と揉めずにスムーズに受給するための手順を、分かりやすくまとめました。申請書の書き方に不安がある方は参考にしてください。
まとめ:一番大切なのは「あなたの心の平和」
ネット上には「権利だから申請すべき!」「会社を許すな!」という強い言葉が溢れています。
もちろん、それは正論です。
でも、その正論を実行するために、あなたの残りのエネルギーを全て使い果たしてしまう必要はありません。

会社にいづらくなるのが嫌だ…
そう思うのは、あなたが弱いからではなく、これ以上傷つきたくないという心の防衛反応です。
お金や正義も大事ですが、一番大切なのは、あなたが今夜ぐっすり眠れること。
ご自身の心の体力と相談して、一番「ホッとする方」を選んでくださいね。







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