心身に障害を負ってしまった際は、あらゆることが不安になってしまいますよね。懸念の1つになりやすいのが、金銭的な問題です。
病気や障害を抱えると、働けなくなってしまうことも多いです。私自身もうつ病で働けなくなり、治療費や生活費の問題が気がかりでした。
長期間の治療が必要な人たちのために、自立支援医療制度というものがあります。この制度を利用すると、医療費の自己負担額を抑えることができるのです。もちろん私も自立支援医療を利用させていただいています。
しかし、こういった制度を利用することで不利益があったら、利用をためらいますよね。職場にばれてしまうのではないか、就職で不利にならないかと危惧している方もいるでしょう。
今回の記事では、以下の内容について解説します。
- 自立支援医療とは?
- 自立支援医療のデメリット6つ
- 自立支援医療についてのよくある質問8つ
- 自立支援医療の申請方法
- その他の支援制度(精神障害者向け)
うつ病の私自身の体験を含めて解説していきます!
この記事を読むと、安心して自立支援医療制度を利用できるようになります。参考にしてみてくださいね。
そもそも自立支援医療とは?
自立支援医療のデメリットを解説する前に、まずは制度について理解を深めましょう。
自立支援医療は医療費の自己負担を減らしてくれる制度
自立支援医療は、疾患や障害の医療費の自己負担を原則1割に軽減する制度です。医療費は3割負担の方がほとんどなので、適応範囲の治療であれば負担を3分の1に抑えられます。
世帯所得や治療内容によって月ごとの負担上限額も決められています。生活保護を受給している場合、月額の負担上限額は0円となります。世帯所得が大きい方は上限額の設定がありません。
また、高額な治療を長期間必要とする方は「重度かつ継続」と判断され、専用の上限額が適用されます。
以下のグラフは月額医療費のイメージです。医療費の7割は通常通り医療保険から支払われ、1割は患者負担、残りの2割は公費から支払われます。その月の自己負担額上限を超えた分は、公費からの支払いです。
長期間継続しなければならない治療は精神的にも負担がかかりますが、金銭的負担が軽減すると治療に専念しやすくなりますね。
自立支援医療の種類3つ
経済的な負担を軽くしてくれる自立支援医療ですが、年齢や症状によって以下の3つに分かれます。
- 精神通院医療
- 更生医療
- 育成医療
精神通院医療
精神疾患の治療で、継続的に通院する方が利用できます。入院費用や保険適用外のカウンセリングなどは適応外となります。
対象疾患の一例を挙げます。
- 統合失調症
- うつ病や躁うつ病
- 不安障害やパニック障害などの神経症性障害
- 発達障害や知的障害
- てんかんなど
対象の疾患と診断されても、継続的な治療が不要と診断されると自立支援医療が適応されません。一方で、対象の疾患でなくても継続的な治療が必要と判断されると、制度が適応されることもあります。
検討している方は、一度主治医に確認してみましょう。
更生医療
更生医療は、身体障害者手帳を取得している方が利用できる制度です。18歳以上で、障害の除去や治療により「確実に効果が期待できるものに対して提供され」ます(厚生労働省HPより引用)。
対象となる障害の種類と医療の一例は以下のとおりです。
障害の種類の例 | 対象となる医療の例 |
視覚障害 | 水晶体摘出術、網膜剥離術、角膜移植術など |
聴覚障害 | 人工内耳植込術、外耳道形成術など |
肢体不自由 | 人工関節置換術など |
心臓機能障害 | 冠動脈バイパス移植術、経皮的冠動脈形成術など |
腎臓機能障害 | 人工透析療法、腎移植術など |
障害や医療の種類によって適応範囲が異なります。検討している方は、一度主治医に確認してみましょう。
育成医療
18歳未満で身体に障害がある、もしくは将来障害が残ると認められる方が利用できるのが、育成医療です。更生医療と同じように、障害の除去や治療により「確実に効果が期待できる者に対して提供され」ます(厚生労働省HPより引用)。
対象となる障害の種類と医療の一例は以下のとおりです。
障害の種類の例 | 対象となる医療の例 |
視覚障害 | 水晶体摘出術、光凝固治療など |
聴覚障害 | 外耳道形成術など |
言語機能障害 | 口蓋裂形成術など |
心臓機能障害 | ペースメーカー埋込み術など |
腎臓機能障害 | 人工透析療法、腎移植術など |
障害や医療の種類によって適応範囲が異なります。検討している方は、一度主治医に確認してみましょう。
自立支援医療のデメリット6つ
自立支援医療の最大のメリットは、医療費の自己負担額が減ることです。しかし、気になるのはこの制度を利用した時のデメリットですよね。
ここでは、自立支援医療を利用する際のデメリットを6つ解説します。実際に利用している私が感じたものを集めたので、参考にしてみてください。
指定した医療機関でしか利用できない
1つ目のデメリットは、あらかじめ指定した医療機関や薬局でしか利用できないことです。
私自身もすっかり忘れていて、用事のついでに普段使わない薬局でお願いしようとしてお断りされたことがあります。ちょっと不便ですよね。
また、転院の際は手続きをしないと転院先の病院で利用できません。気を付けましょう。
適応の疾患の医療でも自立支援医療の対象外になる医療がある
精神通院医療の場合、入院医療や公的医療保険が対象にならない治療については対象外となります。
私の場合は、半年ほど受けていたカウンセリングが対象外でした。費用は50分で7,000円です。
2週間に1回カウンセリングを受けていたので、負担は月に14,000円です。受けて本当に良かったと思っていますが、金銭的な負担は本当に大きかった…!
対象となる疾患の治療は全て適応してほしいと思ってしまいますが、中には治療と言えるのか怪しいものを促す悪い人もいるでしょうし…
こればかりは仕方がないですね。
他の疾患の治療には適用できない
自立支援医療を利用している方でも、他の病気の治療には利用できません。例えば、私の場合はうつ病で制度を利用していますが、持病である喘息の治療費や薬代は3割負担です。
少し考えると当たり前のことなんですが「あわよくばこっちの病気の治療費も安くして欲しい…!」と欲が出てしまうのが人間ですね(笑)
だって医療費は安い方が助かるもんね!(笑)
喘息は自治体によっては補助とかあるようですし…自治体さんお願いします!
受診時に毎回書類の提示が必要
指定した医療機関や薬局では、毎回「受給者証」と「自己負担上限額管理表」を提示する必要があります。忘れてしまうと、保険証の自己負担額で支払うことになります。
*「自己負担上限額管理表」は、自己負担が0円の生活保護受給者や上限額の設定がない方には交付されません。
私も一度忘れてしまい、3割負担で支払いました。次の診察時に提示すると返金してもらえましたが、手間がかかるので忘れないようにしましょう。
受給者証の大きさは自治体によって異なるかもしれませんが、私のものは一般的なお薬手帳と同じくらいのサイズです。荷物が増えてしまうのはちょっと面倒ですね。
1年ごとに更新が必要
個人的に大きなデメリットだと思っているのが、1年ごとの更新です。
必要書類をそろえて市町村の窓口にいくだけなのですが、一番負担なのが「診断書」が必要なことです。
診断書ってお高いですよね…。私が診てもらっている病院では1枚3,000円です。場所によっては5,000円~10,000円することもあるようですね。
「1年に1回くらいいいじゃないか!」と思われるかもしれません。しかし、病気や障害を抱えると何かと診断書のお世話になります。私自身も毎年3回くらいは書いてもらっている気がします。
ちりも積もれば…ですね。制度上仕方ないことではありますが、診断書の提出は2年に1回くらいにしてくれると個人的には嬉しいです(笑)
障害者手帳のような経済的支援は受けられない
障害者手帳を持っていると、普段の生活の中でさまざまなサービスや割引を受けられます。私が住んでいる自治体では、障害者手帳を持っていると交通費が抑えることが可能です。
他にも遊園地や映画で障害者割引が使えたりと、持っていると何かと助かります。しかし、自立支援医療の申請だけではこういったサービスは利用できません。
障害者手帳と自立支援医療は別の制度です。混合しないように気を付けましょう。
こんなデメリットは?よくある質問8つ
ここまでデメリットを解説しましたが、他にも心配な点がある方もいるでしょう。ここからは、自立支援医療についてよくある質問について解説します。
会社や周囲の人にはばれない?
自立支援医療を利用しても、会社や周囲の人にはばれません。
この制度を利用していることは、保険組合、市町村、医療機関しか把握されません。制度の利用については個人情報になるので、本人の同意なしに開示されません。
就職は不利になる?
病気や障害自体が就職に影響を及ぼす可能性はあります。しかし、自立支援医療を利用したことが原因で、就職に不利になることはありません。
個人的には、就職に影響が出る可能性がある病気や障害を治療することが大切だと考えます。自立支援医療を利用して、少ない負担で治療を進めましょう。
社保から国保になるけど大丈夫?
保険証の内容に変更があった場合は、手続きが必要になります。国保から社保に変わる際も同様です。更新すれば制度自体は引き続き利用できるので、安心してください。
生命保険に影響は?
前述したとおり、自立支援医療を利用していることは周りに知られません。そのため、制度の利用が直接生命保険に影響を与えることはありません。
しかし、病気や障害自体が原因で生命保険に新しく加入できないことはあり得ます。生命保険によっても異なる部分なので、確認しましょう。
将来住宅ローンは借りられる?
こちらも同様の回答になります。自立支援医療を利用していることは周りに知られないため、制度の利用が直接住宅ローンに影響を与えることはありません。
しかし、病気や障害によって団体信用保険という死亡保険に入れない可能性があります。そのために、住宅ローンを借りることができないことがあります。
こちらも団体信用保険の種類によって異なるので、確認してみてください。
生活保護と併用できる?
生活保護受給者は、自立支援医療での自己負担が0円になります。
障害者手帳との兼ね合いは?
更生医療の場合は、申請に身体障害者手帳が必要になります。精神障害については、精神障害者保健福祉手帳と自立支援医療を市町村の窓口で同時に申請や更新ができます。
診断書もまとめて1枚で済むので、両方利用している方は同時に申請や更新をしましょう。
障害年金は減額になる?
自立支援法と年金法は別の法律なので、影響しあうことはありません。自立支援を受けながら障害年金を利用することも可能です。
自立支援医療の申請方法
自立支援医療にはデメリットもありますが、圧倒的に申請するメリットが大きい制度です。ここからは、実際に申請する際について解説します。
前述したとおり、自立支援医療の対象について自己判断するのは難しいです。検討する場合は、必ず医師に確認しましょう。
必要書類
まずは、必要書類を解説します。自治体によって書類が異なる場合もあるので、必ず各自治体の情報を確認してください。今回、書類については厚生労働省の情報を元に解説します。
自立支援医療支給認定申請書
自立支援医療支給認定申請書は、市町村の窓口に用意されています。申請時にその場で受け取って記入するか、自治体のHPからダウンロードして記入しましょう。
自立支援医療診断書
自立支援医療の診断書は、様式が決まっています。医療機関で用意されていることが多いですが、自治体によっては窓口に取りに行くか、HPからダウンロードしましょう。
「重度かつ継続」と判断された場合は、様式が異なる場合があります。医師に確認しましょう。
所得が確認できる書類
世帯所得が確認できる書類が必要です。課税証明書や非課税証明書、生活保護受給証明書などが利用できます。
健康保険証
健康保険の確認や身分証明として必要になります。
マイナンバーを確認できる書類
申請にはマイナンバーが必要になります。マイナンバーカードや通知カード、マイナンバーの記載がある住民票などを用意しましょう。
印鑑
申請書に捺印が必要なことがあります。
自立支援医療の利用の流れ7ステップ
それでは、自立支援医療を利用する際の流れについて解説していきます。
①医師に自立支援医療の対象になるか確認する
前述したとおり、自立支援医療の対象になるか自己判断するのは難しいです。必ず医師に対象であるか確認しましょう。
そもそも自立支援医療が利用できるのは、「指定自立支援医療機関」に指定されている病院などです。この制度が必要になる方が受診する病院は対象になっていることが多いですが、念のため確認しましょう。
②必要書類を用意
必要書類を揃えましょう。
私の場合は、「自立支援医療診断書」は病院が、「自立支援医療支給認定申請書」は市役所の窓口が用意してくれました。
③自立支援医療診断書を医師に記入してもらう
指定の診断書を医師に記入してもらいます。
項目が複数あるので、私は依頼してから2週間後の受診時に受け取りました。できるだけ早めに依頼しておくのが良いでしょう。
ちなみに、診断書の書式が異なっていても診断書の料金は請求されます。現金は多めに持っていきましょう。キャッシュレス派の私は、何度もコンビニに駆け込んでいます。
④市町村の窓口に相談
市役所窓口に必要書類をまとめて提出します。
⑤控えを受け取り認定を待つ
申請後は控えを受け取ります。指定した医療機関で控えを提示しておけば、認定された後に払い戻しを受けることができます。
⑥無事に認定されたら
認定されたら、「自立支援医療受給者証」と「自己負担上限額管理票」を受け取ります。これらを指定した医療機関に提示しましょう。自立支援医療の適用を受けることができます。
申請から認定までの間については、払い戻しが可能です。自治体によって方法が異なるので、確認しておきましょう。
⑦1年に1回更新手続きを
1年に一回更新手続きが必要になります。
私が通っている病院では、事前に病院側から「そろそろ更新を」と促してくれます。忘れてしまうと制度が利用できなくなってしまうので、必ず更新しましょう。
その他の支援制度を8つ紹介(精神障害向け)
最後に、自立支援医療を利用している方が併せて利用できる可能性のある制度を簡単に紹介します。今回は精神障害のある方向けに解説します。
障害者手帳
精神障害者用の障害者手帳を「精神障害者保健福祉手帳」といいます。精神障害によって、長期的に日常生活や社会生活に支障が出ている方を対象としています。
精神障害者保健福祉手帳を取得するメリットは、大きく分けて以下の2つです。
- 日常生活でさまざまな支援を受けられる
- 障害者雇用を利用できる
①日常生活でさまざまな支援を受けられる
障害者控除で税金が安くなったり、電車やバスなどの交通費が割引になったりと、経済面でさまざまな支援を受けられます。また、娯楽施設の入場料が安くなったり、障害があっても楽しめるような支援を受けられます。
②障害者雇用を利用できる
精神障害者保健福祉手帳を取得していると、一般雇用の他に障害者雇用を利用できます。障害者向けの就労支援を受けることも可能です。
障害年金
病気やケガで日常生活や仕事に制限を受けた際に、受け取ることができる年金です。この年金は、現役世代でも要件を満たしていれば受け取ることができます。
障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があり、それぞれに等級が設定されています。年金の種類や等級によって受け取れる金額が異なるので、注意が必要です。
受給には細かな要件が複数あるので、希望する場合はよく確認するようにしましょう。
傷病手当金
病気やケガで仕事ができなくなった際に利用できるのが、傷病手当金です。要件を満たした場合、最長1年半の間傷病手当金を受け取ることができます。受け取ることができる金額は、働いていた際の収入によります。
失業手当(失業保険)
失業手当は、次の就職先を探す間の経済的負担を減らすために受給できるお金です。健常者の方でももらえるものですが、病気や障害があると「特定理由離職者」と認定され、受給期間を伸ばしてもらうことができます。
労災保険
パワハラなど業務に原因があって精神疾患を発症してしまった場合、労災と認定され受給できます。こちらも要件が定められているので、確認しましょう。
生活困窮者自立支援制度
経済的に支援を受けられないと最低限度の生活が維持できない可能性のある方に対して、支援する制度です。
生活保護制度
生活が困窮している方に対して、生活保護法によって文化的な最低限度の生活を保障するための制度です。
医療費控除
1月1日から12月31日までに支払った医療費が一定額を超えた場合、その額によって所得控除を受けることができます。
まとめ
自立支援医療を利用することで、医療費の自己負担額を抑えることができます。
自立支援医療にはデメリットもありますが、こちらが大きく不利益にならないように制度がつくられています。安心して利用しましょう。
対象疾患や適応範囲が定められているので、ご自身が当てはまるかどうかは必ず医師に確認する必要があります。
自立支援医療を利用して、経済的な心配を減らしながら治療を続けていきましょう。
コメント