
うつ病があるけど働きたい…

でも一般企業で働くのはまだ難しそう…
収入を得ながら、安定した環境で働きたいと思った時、「就労継続支援A型」という選択肢が気になった方もいるかもしれません。
以前、私は就労継続支援B型事業所を利用し、リハビリとして活用しました。
A型作業所は、B型とは異なり「雇用契約を結ぶ」という大きな特徴があります。
今回は、精神疾患の当事者である私が以下の内容について解説していきます。
1. 就労継続支援A型とは?基本知識とB型との決定的な違い

就労継続支援A型とは、病気や障害などにより一般就労が難しい方を対象に、雇用契約を結び就労機会の提供や訓練を行うサービスです。
障害者総合支援法で定められた国の就労支援サービスの一つで、事業所と利用者が雇用契約を結ぶため「雇用型」とも呼ばれています。
就労継続支援B型との違いは?
| 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | |
| 雇用契約 | あり | なし |
| 対象者 | ・就労支援を利用したが雇用に結びつかなかった人 ・特別支援学校を卒業後、就労に至らなかった人 ・就労経験があるが現在は就労していない人 | ・就労経験があり年齢や体力などの理由から、一般企業で働くことが難しい人 ・50歳以上、または障害基礎年金1級受給者 ・上記以外で、就労移行支援事業者等によるアセスメントで就労面に関する課題が把握されている人 |
| 報酬形態 | 給料(最低賃金以上) | 工賃(最低賃金に満たない場合もある) |
| 利用期間 | 制限なし | 制限なし |
| 利用者数 | 約9万人(令和6年3月時点) | 約35.3万人(令和6年3月時点) |
就労継続支援B型について詳しく知りたい方はこちら!
就労移行支援、就労定着支援との違いは?
A型作業所は、雇用契約を結び就労機会の提供や訓練を行うサービスです。
就労移行支援、就労定着支援は、一般就労と継続就労を目標に支援するサービスです。
就労移行支援について詳しく知りたい方はこちら!
どんな人がA型を選ぶといい?
就労継続支援A型の対象者は、身体障害・知的障害・精神障害(発達障害も含む)などの障害や病気があり、一般就労は難しいものの適切な支援があることで雇用契約に基づく就労が可能な人です。
原則、18歳から64歳までを対象としています。
障害者手帳は必須ではありませんが、利用には「障害福祉サービス受給者証」が必要です。
2. 就労継続支援A型の「仕事内容」と「給料」のリアル

就労継続支援A型でおこなう仕事内容は、一般就労でおこなう業務とほとんど変わりません。
利用者の適性やスキルに応じた業務内容が選べます。
主な業務内容の例

私が利用を検討したA型作業所は、パソコン作業系でした!
賃金のリアルと向上への取り組み
就労継続支援A型では、雇用契約を結ぶため最低賃金が保障されています。
これはB型と比較して大きなメリットです。
厚生労働省によると、2021年時点の就労継続支援A型における平均時給は926円、月給8万6,752円という結果で、過去10年間を見てみると賃金は上昇傾向です。(※令和5年度月額平均給与は86,752円)
国も賃金向上に力を入れており、「賃金向上達成指導員配置加算」を創設するなど、利用者の収入安定を目指しています。
「就労継続支援A型の手取りだけでは生活できない」と感じた時に検討できる支援制度
月額平均給与が約8.6万円では、生活が厳しいと感じる人もいるかもしれません。
その場合、以下のような支援制度との併用も検討できます。
精神疾患の方が利用できる経済的支援制度を5つまとめた記事もありますので、参考にしてみてくださいね!
勤務時間の目安
就労継続支援A型は一般就労と比べて勤務時間が短く、おおむね4〜6時間程度です。
労働時間が長いほど賃金も上がりますが、体調に合わせて無理のない時間の範囲内で働くことが多いようです。
3. うつ病当事者と就労継続支援A型:給料という「安定」の重みと、雇用契約のプレッシャー

うつ病を抱える私にとって、就労継続支援A型で「給料」を得られることは非常に大きな意味を持つと感じます。
経済的な安心感と自己肯定感の向上
うつ病の治療には、通院費や薬代など、少なからずお金がかかります。
休職中は収入が減り、金銭的な不安が精神状態をさらに不安定にすることもあります。
A型作業所で最低賃金が保証された給料を得られることで経済的な不安を大きく軽減でき、治療に専念できる環境を作りやすくなります。

うつ病になると、お金の心配がついて回りますからね…
また、「給料を得て働く」という経験は、自己肯定感を高める上で欠かせません。
社会の一員として認められ、自分の労働が対価として評価される感覚は、うつ病で自信を失いがちな私たちにとって重要です。
規則正しい生活リズムを確立できる点も、体調管理に繋がります。
雇用契約だからこそのプレッシャーとデメリット
しかし、雇用契約を結ぶということは、同時に「責任」や「プレッシャー」も伴います。
4. なぜ当時の私がA型を選ばなかったのか?
ここまでA型作業所のメリット・デメリットを解説してきましたが、なぜ当時の私がA型ではなくB型を選んだのか、その理由を改めてお話ししたいと思います。
B型の記事でも触れましたが、当時の私は「体力的に週3日が限界で、A型は1日の勤務時間が長く体力的に難しい」と判断しました。
当時の私は体が重く、起き上がって活動すること自体が精一杯でした。
A型作業所の雇用契約は、当時の私にとって過剰なプレッシャーになると感じたのです。
体調に波がある中で、安定して出勤し、責任を果たす自信がありませんでした。
もし雇用契約を結んでしまうと、体調が悪い日に無理をしてしまい、かえって回復が遅れるのではないかという不安がありました。

「頑張る」と「無理する」の違いもわからない状態で、A型は厳しいと判断しました…
だからこそ、私は「リハビリ目的」でB型作業所を選びました。
B型は雇用契約がないため、自分の体調やペースに合わせて柔軟に利用できる環境でした。
まずは「社会との緩やかな繋がり」を持ちながら、焦らずに体力と生活リズムを立て直すことに専念したかったのです。
B型作業所についての記事はこちら!
しかし、回復が進んだ「今の私」から見れば、A型作業所は一般就労へ向かうための非常に有効なステップだと考えています。
安定した収入を得ながら、より実践的なスキルを身につけ、社会との接点を増やしていくことは、次のステップに進む上で大きな力になるでしょう。

私も、今の職場に就職しなかったらA型にいたと思います!
5. 就労継続支援A型の利用方法と賢い選び方

就労継続支援A型作業所の利用を考えている方のために、利用までの流れと、自分に合った事業所を見つけるためのポイントを解説します。
利用までの流れ(5ステップ)
- 主治医に相談し、許可をもらう
まずは、現在の体調や状況について主治医とよく相談し、A型作業所の利用が可能か確認しましょう。 - 利用したい事業所を探す
ハローワーク、地域の障害福祉窓口、インターネットなどで情報を集め、気になる事業所を見つけます。 - 事業所の選考を受ける
見学や業務内容の説明を受け、面接などの選考を受けます。
必要な配慮や就労可能時間などを正直に伝えましょう。
スキルや定員によっては希望が通らないこともあります。 - 「障害福祉サービス受給者証」を申請する
事業所の利用が決まったら、お住まいの市区町村の障害福祉窓口で「障害福祉サービス受給者証」を申請します。
障害者手帳がない場合は、自立支援医療受給者証や医師の診断書が証明書類になります。
申請から支給決定まで約2ヶ月かかることが多いので、事業所探しと並行して進めるのがおすすめです。 - 事業所と契約し就労開始
受給者証が発行されたら、事業所との間で労働内容や勤務時間、給料などの労働条件を確認し、雇用契約を結んで就労開始となります。
利用時間と利用料
就労継続支援A型の勤務時間は一般就労より短く、おおむね4〜6時間程度が多いです。
体調に合わせて無理のない時間の範囲内で働きましょう。
利用料は、利用回数にかかわらず所得に応じて無料または上限額が設けられています。
世帯の収入状況で負担上限月額が変わるので、お住まいの自治体の窓口で確認しましょう。
自分に合ったA型作業所の賢い選び方
うつ病があっても就労継続支援A型で働ける!
就労継続支援A型は、うつ病を抱えながらも「働きたい」「安定した収入を得たい」という願いを叶える強力な選択肢です。
雇用契約を結ぶことで得られる経済的な安定感や自己肯定感は大きなメリットですが、同時に体調の波との兼ね合いやプレッシャーといったデメリットもあります。
A型もB型も、それぞれに異なるメリット・デメリットがあり、どちらが「良い・悪い」ということではありません。
大切なのは、今の自分の体調や目標、そして将来の希望と照らし合わせて、最適なステップを選ぶことです。
焦らず、ご自身のペースで一歩を踏み出すことを心から応援しています。
あなたの新しい一歩が、より良い未来へと繋がることを願っています。
精神疾患を抱えている人が頼れる制度一覧をまとめた記事もあります。









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