うつ病を患うと、精神症状だけでなく身体症状もつらいですよね。私自身もうつ病を経験していますが、食欲不振や吐き気、めまいや動悸などのさまざまな身体症状に悩まされました。
その中でも特につらかったのが、肩こりや首こりです。肩こりや首こりがひどいと頭痛もひどくなり、不眠も悪化してしまいます。ただでさえうつ病の症状で不眠がつらいのに、肩こりのせいでさらに眠れなくなるのはしんどいですよね。
健康な人は「マッサージでもストレッチでもすればいいじゃん」と思うかもしれません。しかし、うつ病になるとトイレに行くことすら重労働です。
私もうつ病がひどい時は寝たきり状態だったので、限界まで我慢してから、仕方なく気力を振り絞ってトイレに行っていました。そんな状態なのに、起き上がってマッサージやストレッチをするなんて考えられないのです。
今回の記事の内容は以下のとおりです。
- うつ病で肩こりになる大きな原因5つ
- うつ病による肩こりの代表的な解消法6つ
- うつ病がつらくても取り入れやすい!手軽な肩こり解消法4選
- うつ病の肩こり解消に!頼れる医療機関の紹介
作業療法士でありうつ病経験者である私が、闘病中でも取り入れやすい肩こり解消法を解説します。基本的に寝たままできることを中心にお伝えするので、体調が良いときに試してみてくださいね。
うつ病で肩こりになる大きな原因5つ

そもそも、なぜ主な症状が気分の落ち込みであるうつ病によって、肩こりが引き起こされるのでしょうか。
うつ病と肩こりは複雑に関係しています。その中でも大きな原因を5つピックアップして解説します。
痛みを抑制する神経伝達物質が不足するから
うつ病の原因はまだはっきり判っていませんが、「セロトニンなどの脳内の神経伝達物質が不足するため」という説が有力です。
セロトニンは「幸せホルモン」と呼ばれるように、心を安定させる効果があります。それだけでなく、朝にしっかり覚醒を促したり、意欲を高める効果もあります。
反対に、セロトニンが不足するとイライラや不安感が強くなってしまうのです。うつ病になると、このセロトニンをはじめとした神経伝達物質が減ってしまい、抑うつ状態になったり無気力になったりすると考えられています。
このセロトニンは、実は痛みにも大きく関わっているのです。セロトニンには、痛みを抑える効果があります。人間には強い痛みを感じたとき、セロトニンをたくさん放出して痛みから自身を守る仕組みがあるのです。
セロトニンが不足しているうつ病患者は、痛みに対してセロトニンをうまく放出することができません。そのため、健康な人よりも痛みを感じやすくなっています。
うつ病患者の痛みは「心因性の痛み」と呼ばれますが、これは決して気のせいではありません。体の痛みを脳の中で抑えられず、過剰に感じやすい状態になっているのです。
ストレスによって体が緊張するから
うつ病になると、ほぼ一日中ストレスにさらされる方が多いでしょう。これからの生活のことや希死念慮など、嫌なことばかり考えてしまいます。
このような不安や緊張状態は、体を緊張させます。
人前で何かを発表する場面や、何か失敗したときに「上司や先輩に怒られてしまうかも…」と不安になった場面を思い返してください。緊張や不安で体が固くなっていませんでしたか?うつ病になると、このような反応が常に起きている人も少なくありません。

私も、夫に「体に力が入ってるよ」と指摘されることが多かったです。
体を緊張させるということは、全身の筋肉を緊張させるということです。無意識に全身の筋肉に力が入ってしまうと、当然疲れますよね。筋肉もこり固まってしまいます。
うつ病による不安感や緊張によって常に筋肉が緊張してしまうため、うつ病の人は肩こりが起きやすいのです。
活動量が低下するから
うつ病になると気力や体力が落ちるため、活動量が落ちてしまう人が多いです。私のように寝たきりになってしまう人も少なくありません。
体を動かさなくなると、全身の血流が悪くなります。血流が悪くなると、筋肉に十分な酸素や栄養が送られなくなり、筋肉の機能が低下していきます。その結果、筋肉が固くなって肩こりになってしまうのです。
筋肉が固くなると、周りにある神経を圧迫し、痛みが発生します。痛みは発痛物質によって感じますが、本来は老廃物と一緒に血流で筋肉から排出されます。
しかし、活動量が低下すると血流も悪化するため、発痛物質が筋肉に留まり続けて痛みを伴うひどい肩こりになるのです。
姿勢が悪くなりやすいから
うつ病の人はどんな姿勢をしているイメージがありますか?
背筋を伸ばして胸を張って堂々とした姿勢をイメージする方は少ないはずです。大体の人は猫背でうつむくような姿勢をイメージしますよね。
気持ちが落ち込むと、姿勢も悪くなりやすいです。猫背で下をむくような姿勢は、首や肩周りの筋肉と関節に大きな負担をかけます。
人間の頭の重さを知っていますか?およそ体重の10%と言われており、成人で約4~6㎏程です。物で例えると、2リットルのペットボトルが2~3本分、大きめのスイカ1玉、1袋5㎏のお米くらいですね。結構重たいですよね。
首の骨は、下のイラストのように前に曲がっています。この前弯のおかげで、細い人間の首でも頭の重さを分散して支えることができるのです。

しかし、うつむいた姿勢になると、この前弯が伸ばされた状態になります。すると、頭の重さがうまく分散できず、首や肩の筋肉に大きな負担がかかります。そのため、首や肩がこってしまうのです。
「痛みの悪循環」が起こるから
痛みの悪循環は、痛みが慢性化する原因と考えられています。
お腹が痛いとき、ふんぞり返った姿勢をする人は少ないです。ほとんどの人が無意識に腹筋に力を入れて、体を丸める姿勢をします。痛みを感じると、人間は痛みを感じた部分の筋肉を無意識に収縮させるのです。
筋肉が収縮されたままになると、その部分の血流が悪くなります。前述したとおり、血流が悪くなると筋肉に必要な酸素や栄養が届かなくなったり、神経を圧迫したりして痛みが生じます。
痛みが出ると、また痛みを感じた部分の筋肉が収縮して血流が悪化するというサイクルができるのです。これが痛みの悪循環です。
肩こりでも、痛みの悪循環が起きます。肩こりで痛みが強いとき、無意識に肩が上がっていませんか?痛みの悪循環によって、さらに痛みが悪化しているのかもしれません。
うつ病による肩こりの代表的な解消法6つ

うつ病と肩こりは非常に深く関係していることが分かりましたね。ここからは、うつ病による肩こりを解消する方法を6つ解説します。
抗うつ剤などの薬物療法
そもそも、うつ病自体が改善すれば、うつ病に伴う肩こりも改善します。そのため、うつ病を改善させる精神科や心療内科で処方される抗うつ剤は、うつ病を伴う肩こりも改善させるのです。
また、抗うつ剤には、セロトニンなどの神経伝達物質を増やす働きがあります。前述したとおり、セロトニンには痛みを抑制する効果があります。抗うつ剤を飲むことで、脳が痛みを感じにくくする効果も期待できるのです。
カウンセリングなどの精神療法
うつ病自体が改善すればうつ病に伴う肩こりも改善するため、精神療法も解消法の1つと言えるでしょう。
カウンセリングや認知行動療法などによって、うつ病の元となる原因や考え方が改善すれば、うつ病自体の改善につながります。
ちなみに、私自身もカウンセリングや認知行動療法を受けていました。人によって感じ方はそれぞれですが、私は受けて本当に良かったと思います。

実際にカウンセリングや認知行動療法を受けた時の日記も書いていくので、参考にしてみてくださいね!
マッサージやストレッチ
肩こり解消といえば、マッサージやストレッチが頭に浮かぶ方は多いでしょう。
マッサージをすることによって血行が良くなり、発痛物質や老廃物が排出され、肩こりの症状が和らぎます。また、ストレッチをすることで、筋肉を動かすことで血流改善につながります。
肩こり改善において、血行を良くすることはとても大切なのです。
リラクゼーション
ストレスを感じると、無意識に筋肉を緊張させて体をこわばらせてしまいます。筋肉の過緊張が続くと、肩こりが悪化してしまいます。
自分がリラックスできて、体の力が抜ける方法を探しましょう。心地よい香りのアロマを楽しんだり、好きな音楽をかけたり、甘いものを少し口にしたりなど、寝たままでもできることを試してみましょう。
温熱療法
お風呂に入ると、肩こりや腰痛が楽になった経験は誰しもしているでしょう。
痛みがある部分を温めることで、血流が良くなり肩こりが改善します。また、温めることでリラックス効果も望めます。
しかし、うつ病がある方にはお風呂に入れないという方も多いでしょう。おすすめの温熱療法のやり方を後述するので、参考にしてくださいね。
軽い有酸素運動
有酸素運動は、筋肉を動かし血流を改善させます。酸素を取り込みながらの運動になるので、全身の筋肉に酸素や栄養を循環させることができます。
体調が落ち着いてきたら、少し近所を散歩してみるのも良い方法です。
うつ病がつらくても取り入れやすい!手軽な肩こり解消法4選

うつ病に伴う肩こりを改善する方法はいくつかありますが、どうしてもベッドから動けないのがうつ病です。なかなか実践は難しいですよね。
ここからは、私がおすすめする手軽な肩こり解消法を解説していきます。
4-7-8呼吸法
4-7-8呼吸法とは、アメリカのアンドルー・ワイル博士が提唱した呼吸法です。ゆっくりと腹式呼吸をすることでリラックス効果が得られるほか、血流改善や姿勢の改善にもつながります。
- ベッドで仰向けになるか、椅子に座って体の力を抜きます。
- 口から息をしっかり吐きます。
- 鼻から4秒かけて息を吸います。
- 7秒間息を止めます。
- 口から8秒かけて息を吐きます。細く長く吐くのがポイントです。
- 何回か繰り返します。

私もうまく眠れない時にこの呼吸法を行っています。
眠らなければいけないという緊張がゆるみ、動悸が落ち着いてくることが多いです。
秒数にこだわりすぎてもストレスになってしまうので、最初は秒数はあまり気にせずにゆったりと深い呼吸をしましょう。
漸進的筋弛緩法
アメリカのエドモンド・ジェイコブソン博士が考案したリラクゼーション法です。ストレスで無意識に緊張した体をリラックスさせる方法です。
体の力を抜こうとしても、緊張状態にあるとうまく抜けません。筋肉は緊張してから力を抜くと脱力しやすくなります。この筋弛緩法は、一度筋肉に力を入れた後にゆるめる動作を繰り返すことで、筋肉をゆるめる方法です。
この方法は全身のさまざまな筋肉を使ってできますが、今回は肩周囲の筋肉に対するやり方を解説します。すべて仰向けの状態でできるので、試してみてください。
肩
- 両肩を耳に近づけるようにぐっと上げて、10秒間緊張させます。
- 一気に力を抜きます。15秒から20秒ほど脱力しましょう。
- 2~3回繰り返します。
両腕
- 力こぶを作るように腕を曲げて、10秒間緊張させます。
- 一気に力を抜きます。15秒から20秒ほど脱力しましょう。
- 2~3回繰り返します。
両手
- 両腕をリラックスさせた状態で手のひらを上に向けます。
- 親指を手の中に入れて握った状態で、10秒間緊張させます。
- 一気に力を抜きます。15秒から20秒ほど脱力しましょう。
- 2~3回繰り返します。
首
- 右を向いた状態で10秒間力を入れる。
- 一気に力を抜きます。15秒から20秒ほど脱力しましょう。
- 左側も同様に行います。
ストレッチ
3つ目はストレッチです。今回は寝たままできるストレッチを4つ紹介します。どれもゆったりと、気持ちいいくらいの強さで行ってください。
首の横の筋肉を伸ばすストレッチ
- ベッドの上に仰向けになります。
- 頭を右に傾けます。左の首の筋肉が伸びているのを感じながら、10秒以上伸ばしましょう。
- 次に、頭を左に傾けます。今度は右の首の筋肉を伸ばすイメージで、10秒以上行います。
たったこれだけです。肩の筋肉は首とつながっています。首周りの筋肉を伸ばして、血流を良くしましょう。
大胸筋を伸ばすストレッチ
- ベッドの上で横向きになります。軽く体を丸めると、姿勢が保ちやすいです。
- 体の上にある方の腕を天井に向かって伸ばし、体の後ろ側に向かってまっすぐ倒していきます。胸の筋肉が伸びているのを感じながら、20秒ほどキープしましょう。
- 反対側も同様に行います。
ポイントは、胸を開くイメージで肩甲骨から動かすことです。大胸筋は猫背になると縮こまってしまうので、痛くない範囲でしっかり伸ばしましょう。胸を張ることで呼吸もしやすくなります。
肩甲骨周りのストレッチ①
- ベッドの上で仰向けになり、そのままバンザイします。
- 肘から腕を下に引き、からだの横までおろします。
- ①と②をゆっくり5回ほど繰り返します。

②は、銃を持った人に「手を挙げろ!」と言われた時のポーズです。
そこからさらに左右の肩甲骨同士をくっつけるイメージで、思いっきり胸を張りましょう。
肩甲骨周りのストレッチ②
- ベッドの上で横向きになります。
- 体の上の方の腕を天井に向かって伸ばし、肩甲骨から後ろに大きく5回回します。
- 反対側も同様に行います。
肩甲骨周りには、たくさんの筋肉が複雑についています。ゆっくりと大きく動かしましょう。
注意点
比較的行いやすいストレッチですが、注意点が2つあります。
①痛くない範囲で、気持ちいいくらいの強さで行うこと
縮こまった筋肉をいきなり強く伸ばすと、筋肉を痛めてしまいます。強くやれば良いものではありませんので、適度に伸ばしましょう。
②できれば20秒くらい伸ばす
筋肉は、ただ伸ばせば伸びるものではありません。筋肉が伸ばされた時に「筋肉が引っ張られているから、ちぎれないように筋肉を伸ばさなきゃ!」と指令が出て、初めて筋肉が伸びてストレッチされます。
筋肉が伸ばされてから、実際に伸びるまでには時間がかかります。ストレッチで20秒ほど伸ばすと、しっかり筋肉を伸ばすことができるのです。
温熱療法
最後に解説するのは、温熱療法です。肩や首を温めることで血流を改善させます。
体を温めるにはお風呂につかるのが良い方法ですが、うつ病になるとお風呂に入ることができない方も多いでしょう。そこで、今回は家庭で手軽にできる製品を利用します。
それがこちらです。
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私も現在進行形で愛用している、あずきのちからです。電子レンジで温めて繰り返し使用できるものであれば、類似品でもかまいません。
お風呂のように全身を温めることはできませんが、つらい肩回りの血行を良くしてくれます。また、温めることによるリラックス効果もあります。

私はこれを使った後にうたた寝してしまうことが多かったです。
リハビリの世界にもホットパックという患部を温める機械があります。私自身も肩こりや首こりが強い患者さんにホットパックをした経験があります。こういった商品は、家庭用の簡易版ホットパックのようなものです。
お風呂に入れなくても、レンジで加熱するだけで数分間肩回りを温めてくれるという手軽さに助けられました。私は寝たきり状態の時、トイレに行くついでに電子レンジに放り込んで、ベッドに戻る時に回収して使っていました。
商品の種類
私が使用しているあずきのちからでも、色々な形があります。
一番良く使用するのが、肩用のものです。肩全体を温められる形になっています。
アイマスク型は、目が疲れた時に使うと目元が軽くなります。寝たきりだとスマホを触ることしかできないことも多いので、時々アイマスクをしてみるのもおすすめです。
蒸気でホットアイマスクであれば、香りが選べる上に袋を開けるだけで温まり始めるので、もっと手軽に使用できます。
腰用にベルト型のものも販売されています。
注意点
このような商品は電子レンジで手軽に使えるのがメリットですが、以下のような注意点もあります。
①やけどに注意
電子レンジでの加熱のしすぎには要注意です。自力で取り外せない位置に使用するのも止めましょう。
布団の中や電気毛布などと一緒に使用するのも危険です。温まりすぎてやけどになってしまうことがあります。
寝ながら使用するのも、気が付いたらやけどしていた…ということになりかねません。私はよく寝落ちしていましたが、しっかり熱を持っている時に寝ないように気を付けましょう。
②皮膚に異常がある部分には使用しない
ケガやかぶれなどが起きている部分に使用するのは止めましょう。特に、やけどをした部分に使用すると悪化してしまう可能性があります。
③病気がある方は医師に相談
特に糖尿病がある方は注意が必要です。その他にも気になることがあれば、かかりつけ医に相談しましょう。
うつ病の肩こり解消に!頼れる医療機関の紹介

最後に、うつ病による肩こりがつらい時に頼れる医療機関を紹介します。
精神科や心療内科
うつ病に伴う肩こりの場合は、まずは精神科や心療内科に相談しましょう。他の症状との兼ね合いにはなりますが、場合によっては抗うつ剤や漢方などの薬を調整することで症状が軽減することがあります。
また、カウンセリングなどを検討してくれることもあります。定期的な診察時で構いませんので、一度肩こりのことも相談してみましょう。
鍼灸整骨院
私がお世話になっているのが、鍼灸整骨院です。症状に合わせてマッサージや電気療法、鍼やお灸などをしてくれます。
私の場合は鍼やお灸がとてもよく効きます。柔道整復師さんに聞くと、うつ病で肩こりや首こりがひどく整骨院に通っている方は結構多いようです。
精神科や心療内科で肩こりに対する直接的な治療が難しい場合、整骨院にも頼ってみましょう。
かかりつけの内科
自分では「うつ病に伴う肩こりだ」と思っていても、原因が実は他のところにあるという場合もあります。首の病気や心臓の病気などでも、肩こりが出ることがあるのです。
肩こりや首こりがずっと良くならない、悪化していく一方など、気になる場合は内科で相談してみましょう。必要であれば整形外科などの他の科を紹介してくれます。
まとめ
今回の記事では、うつ病で肩こりになる原因と寝たままできる解消法、頼るべき医療機関について解説しました。
うつ病の症状によくある肩こりですが、寝たきり状態でも解消法はあります。どうしてもうつ病の闘病期間は長くなりがちです。少しでも楽に過ごせるのであれば、それに越したことはありません。
しかし、今回紹介したものを全て行う必要はありません。体調が良い時にできそうなものから試してみてくださいね。
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